脚本のト書きの書き方:基本ルールと実例
ト書きとは、脚本のうちセリフ以外のすべて、つまり観客に見えるもの、聞こえるもの、登場人物の行動のことです。読む体験の大半を担うのはト書きであり、読み手が「この人は書ける」かどうかを判断するのもト書きです。このガイドでは、多くの映画・テレビ作品と Kashna Script が採用している国際標準(アメリカ式)の脚本書式を扱います。日本の縦書き脚本のように、国によっては独自の書式もあります。基本ルール、ページの上でシーンのテンポを作る方法、書き直しのビフォー・アフター、そして脚本を重く感じさせる間違いを解説します。
2026年9月更新 · 約8分で読めます
1. ト書きとは
ト書き(英語ではアクション、シーン描写、あるいは単にディスクリプションと呼ばれます)は、柱(シーン見出し)とセリフの間に置かれます。本文エリアの幅いっぱいを使い、左余白から書き始め、通常の大文字・小文字で書きます。
ト書きの役割は三つです。場面を設定すること、登場人物の行動を見せること、そして読み手がその瞬間をどれくらいの速さで読み進めるかをコントロールすることです。このガイドのほかの内容は、すべてこの三つの役割のためにあります。
2. 現在形・能動態で書く
脚本は、上映中の映画をそのまま描写するものです。そのためト書きは必ず現在形で書きます。「Lena walked in」ではなく「Lena walks in」です。
能動態を優先しましょう。主語が動作をする形です。短く、明快で、登場人物が文の先頭に来ます。
| 弱い書き方 | 強い書き方 |
|---|---|
| The door is opened by Marcus. | Marcus opens the door. |
| Lena is running down the stairs. | Lena runs down the stairs. |
| A shot is heard. | A GUNSHOT. |
「is running」のような進行形が間違いというわけではありません。多くの書き手が、続いている状況に時々使います(「Snow is falling as she arrives」)。ただ、それを基本形にしないことです。単純現在形のほうが臨場感があります。
3. 見えるもの・聞こえるものだけを書く
これが最も重要なルールです。観客が受け取れるのは映像と音だけなので、ページにも映像と音だけを書きます。登場人物の過去、考え、目に見えない感情は撮影できません。小説家はこれを内面描写と呼び、脚本家はアンフィルマブル(撮れないもの)と呼びます。
俳優は「父が出ていった夏を思い出す」を演じることができません。内面の状態を、目に見えるもの、つまり行動、反応、物に置き換えましょう。
このルールには妥当な例外があります。その瞬間がどう演じられるのかを俳優や読み手に伝える短いニュアンスは、広く受け入れられています。たとえば「She smiles. It doesn't reach her eyes.」(笑顔だが、目は笑っていない)。特にコメディでは、語り口やトーンを出す一文を許す書き手も多くいます。判断の基準は、それが映画を思い描く助けになるのか、それとも小説でしか伝えられない情報なのか、です。
4. 短い段落と余白
読み手は週に何十本もの脚本を読みます。そして最初に読むスピードを落とすのは、文字がびっしり詰まったかたまりです。多くの書き手はト書きの段落を長くても3〜4行に収め、さらに短くする人も少なくありません。ページの余白は、そのまま読む速さになります。
1段落に1つの映像、1つのビート
便利な目安があります。1つの段落には、1つの映像、1つの行動、1つのビート(感情や展開の小さな単位)だけを書くことです。焦点が移ったら、新しい段落を始めます。多くの読み手は1段落をおよそ1ショットとして受け取ります。そのため、この技法はカメラ用語を使わずに「ページの上で演出する」とも言われます。
改行でテンポを作る
改行は時間をコントロールします。長い1段落は、その瞬間を途切れないものに感じさせます。それを1行ずつに分けると、読み手の速度が落ち、一つひとつのビートが効いてきます。サスペンス、アクション、転換点で使いましょう。すべてのシーンで使うものではありません。
同じ内容を1文で書いても(「Lena reaches for the handle but stops when a shadow moves behind the glass, and steps back」)、情報としては正確です。しかし緊張感は消えてしまいます。
Kashna Script なら、書式ではなく物語に集中できます。ト書き、柱、役名、セリフは入力と同時に整形されます。メニューは不要で、すべての機能がキーひとつで呼び出せます。先行アクセスに登録する。
5. 副詞より具体的な動詞を
「walks quickly」(速く歩く)は、1語で済む仕事を2語でしています。動き方をすでに含んだ動詞を選びましょう。hurries(急ぐ)、strides(大股で歩く)、scurries(ちょこちょこ走る)、marches(ずんずん進む)。それぞれがまったく違う人物を描きます。
| こう書く代わりに | こう書いてみる |
|---|---|
| walks slowly(ゆっくり歩く) | shuffles, trudges, drifts, creeps |
| says angrily(ト書きで「怒って言う」) | snaps、または行動で見せる:slams the cup down |
| looks at it carefully(注意深く見る) | studies, examines, squints at |
| closes the door loudly(大きな音でドアを閉める) | slams the door |
あいまいな名詞や埋め草の言葉も同じです。「starts to」「begins to」(〜し始める)、「suddenly」(突然)、「very」(とても)は、ほとんど何も足しません。画面の中の人は、ドアを開け始めたりしません。ただ開けるのです。
6. 音や小道具の大文字表記
伝統的に、ト書きではいくつかのものを大文字で書きます。
- 登場人物の初登場時の名前。たいてい年齢を添えます:
LENA (30s)。これはほぼ全員が守っている慣習です。詳しくは登場人物の紹介を参照してください。 - 重要な音:
GUNSHOT(銃声)、電話がRINGS(鳴る)、ガラスがSHATTERS(砕ける)。 - 重要な小道具や視覚効果。物語や撮影準備にとって意味のあるもの。
ト書きの中で、ここほど書き方が分かれる部分はありません。音や小道具を大文字にする習慣は撮影台本から来ています。撮影台本では、各部署が自分に必要なものを探して目を走らせるからです。スペック脚本(売り込みやエージェント獲得のために書く脚本)では、大文字にするのは登場人物の紹介と、ときどき重要な音だけという書き手が多く、音の大文字をまったく使わない人もいます。どちらを選んでも、それで脚本が落とされることはありません。問題になるのは使いすぎです。2語に1語が大文字だと、何も目立たなくなります。
7. カメラ指示と「we see」
スペック脚本では、ショットを決めるのは監督です。シーンごとに CLOSE ON、PAN TO、DOLLY IN と書くと素人っぽく見え、読むスピードも落ちます。ショットは文章そのもので示すことができます。
「The gun on the table」のように短く独立した1行は、それだけでクローズアップを暗示します。観客が読まなければならないテキストメッセージのインサートのように、特定のショットが物語に不可欠な場合は、時々カメラ指示を入れてもかまいません。
「we see」(私たちは〜を見る)や「we hear」(〜が聞こえる)は、もっと意見が分かれます。ト書きに書くものはすべて「見える」ものなので、多くの読み手はこれを埋め草とみなします。一方で、プロの脚本家を含め、注意を向けさせたり、遊び心のあるトーンを出したりするために「we」を時々使う人もたくさんいます。安全なのは、「we see」は基本的に削り、その瞬間に本当に役立つときだけ残すことです。
8. ビフォー・アフター:書き直しの実例
よくある問題をほとんど詰め込んだ、初稿のト書きです。
同じ場面を書き直すと、こうなります。
変わった点:「we see」がなくなり、受動態が能動態になり、副詞が動詞になりました。撮影できない過去(「worked at the diner for twenty years」)は映像になり、考え(「he wonders if she's in trouble」)は反応になり、長い1段落は短い五つのビートになりました。書き直しは元とほとんど同じ長さなのに、ちゃんとシーンとして動いています。
9. よくある間違い
- 文字の壁。6行、8行、10行の段落。分割しましょう。
- 撮影できないものを書く:考え、過去の経緯、記憶、画面外の事実。
- 俳優を1行ずつ演出する:うなずき、ひと口飲む動作、視線のすべて。意味のある仕草だけを書きましょう。
- 場所を描写しすぎる。目録ではなく、特徴的なディテールを一つか二つ。残りは美術監督の仕事です。
- ト書きに隠れたセリフ。たとえば「She tells him she's leaving.」(出ていくと彼に告げる)。口に出すのなら、セリフとして書きましょう。
- ト書きとセリフで役名が一致しない。役名が DANIEL なら、3行後に「the cook」(コック)と呼ばないこと。
- トランジションやカメラ用語だらけ。トランジションは控えめに使い、ショットは監督に任せましょう。
すっきりしたト書きは長さにも影響します。引き締まった描写はページ数を正直に保ちます。読み手はページ数から上映時間を見積もるので、これは大切です。詳しくは脚本のページ数を参照してください。
10. よくある質問
脚本のト書きとは何ですか?
ト書きはシーンの描写で、セリフや柱以外のすべてです。観客に見えるもの、聞こえるものを、現在形で、左余白から書きます。
ト書きはどのくらいの長さで書けばいいですか?
多くの書き手は、ト書きの1段落を長くても3〜4行に収め、1段落に1つの映像またはビートだけを書きます。段落が短いほど速く読め、余白も増えます。
脚本で「we see」を使ってもいいですか?
書式上の誤りではありませんが、埋め草とみなす読み手が多くいます。基本的には削り、本当に注意を導いたりトーンを作ったりする場面でだけ残しましょう。
ト書きでは何を大文字で書きますか?
登場人物の初登場時の名前は、ほぼ必ず大文字にします。重要な音や小道具も大文字にする書き手は多いですが、それは撮影台本のためのものと考える人もいます。いずれにしても控えめに使いましょう。
ト書きに登場人物の心の中を書いてもいいですか?
直接は書けません。考えは撮影できないからです。代わりに、目に見える行動、反応、物で見せましょう。作り笑いのように、その瞬間がどう演じられるかを示す短いメモは広く受け入れられています。
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